銅加工のポイント!銅の種類や特徴・加工が難しいと言われる理由とは
2025年4月3日
銅は電気伝導性や熱伝導性に優れた金属素材ですが、その特性ゆえに切削や溶接には独自のテクニックが必要です。性質を理解せずに加工すると、バリの発生や溶着、変形などの問題が生じることも。
この記事では、銅の加工が難しいと言われる理由や、銅の種類ごとの特徴、適切な加工方法について解説します。
銅の特徴とは
まずは、銅の加工に取り組む上で知っておきたい主な特徴について解説します。
加工しやすい
銅は金属の中でも柔らかく加工しやすい素材として知られています。展延性に優れているため、プレス加工や曲げ加工など塑性加工に適しており、複雑な形状への加工も可能です。
ただし、柔らかいがゆえに表面に傷がつきやすく、変形しやすいという欠点もあります。また切削加工では刃先への溶着やバリの発生といった問題が起こりやすいため、適切な工具選びと加工条件の設定が重要です。
熱や電気を通しやすい
銅は熱伝導性と電気伝導性に優れた金属です。電気伝導率は銀に次いで高く、電気抵抗率は1.67μΩcm(20℃)と非常に低いため、電線や配電部品、電子機器の部品などに広く使用されています。
また熱伝導率も372〜402W/mKと高いため、熱交換器やヒートシンクなど放熱を目的とした部品に適しています。
磁性が無い
銅は完全な非磁性を持つ金属で、強い磁石を近づけても磁性を帯びることがありません。したがって、磁気の影響を受けやすい精密機器や電子機器の部品製作に適しています。たとえば地球の磁気を観測する機器では、観測データの狂いを防ぐために銅合金が使用されることがあります。
また、MRI装置など医療機器の部品としても非磁性という特性が活かされています。この特性は、純銅だけでなく多くの銅合金でも維持されるため、磁気の影響を避けたい場面で広く活用されています。
菌や腐食に強い
銅には優れた抗菌性と耐食性があります。銅イオンはウイルスや細菌の細胞膜を破壊し、細胞のエネルギー生成を阻害する効果があるため、病院や食品工場などの衛生管理が重要な場所で使用されています。
また、空気中で表面に酸化膜が形成されることで内部が保護され、腐食の進行を抑える性質も持っています。そのため、水回りや屋外設置の製品にも最適です。
ただし、酸化により表面が緑青(ろくしょう)に変色することもありますが、これは内部腐食を防ぐ保護層の役割も果たしています。この特性により、銅製品は長期間使用しても劣化しにくいという利点があります。
リサイクルしやすい
銅は再資源化が容易な金属で、使用済み製品から回収された銅はほぼ100%リサイクル可能です。鉱石から銅を抽出する場合に比べ、リサイクル処理ではCO2排出量を大幅に削減できるため、環境負荷の低減につながっています。
また、リサイクル銅は品質劣化もほとんどなく、新しい銅製品の原料として繰り返し使用可能です。資源の有効活用という観点からも、銅のリサイクルは積極的に推進されています。
リサイクル性の高さは、持続可能な社会の実現に向けて重要な特性と言えるでしょう。身近なところでは、古い電線や電子機器からの銅回収も活発に行われています。
銅の種類と加工用途
ここでは、銅の種類と各種類の特徴、適した加工用途について解説します。
純銅
純銅は銅の純度が99.90%以上の工業用銅で、銅本来の特性である高い電気伝導性と熱伝導性を持っています。含有する酸素量によって、タフピッチ銅、脱酸銅、無酸素銅の3種類に分けられ、それぞれ特性や用途が異なります。
タフピッチ銅
タフピッチ銅(C1100)は0.02~0.05%程度の酸素を含む純銅で、一般的な純銅として広く使用されています。電気伝導性と熱伝導性に優れ、加工性も良好なため、電線や配電盤部品、放熱器などに使用されています。
比較的安価で入手しやすいのが特徴ですが、600℃以上の高温加熱を行うと水素脆化が起こりやすいという欠点があります。
水素脆化とは、材料内部の酸素と水素が反応して水蒸気を発生させ、内部に亀裂やブローホールを生じさせる現象です。そのため、溶接やろう付けには向いておらず、高温環境での使用には注意が必要です。
無酸素銅
無酸素銅(C1011・C1020)は酸素含有量が0.001%~0.005%と極めて少ない高純度の銅で、電気伝導性と熱伝導性が非常に高いのが特徴です。高温加熱による水素脆化に対する耐性があるため、溶接やろう付けにも適しています。
また、極低温環境でも脆性破壊が起こりにくく、電気伝導性・熱伝導性の高さを維持できるため、超伝導機器や低温実験装置の部品としても利用されています。
製造には真空溶解法や還元性雰囲気溶解法が用いられるため、タフピッチ銅より高価ですが、高品質な電子部品や精密機器の部品など、高い性能が求められる用途に使用されています。
脱酸銅
脱酸銅(C1201・C1220・C1221)は、溶解した電気銅に脱酸剤を加えて酸素を約0.01%まで除去した純銅です。タフピッチ銅の水素脆性対策を行ったもので、リンなどの脱酸剤を使用したものを「りん脱酸銅」と呼びます。
タフピッチ銅に比べて電気伝導性はやや劣りますが、高温加熱しても水素と反応して内部から水蒸気が生成されにくく、水素脆性を起こしにくいという利点があります。
そのため、溶接やろう付けを行う部品や、高温環境で使用される部品に適しています。配管材料や熱交換器、エアコンの部品など、熱を扱う機器の部品として広く使用されています。
合金銅
合金銅は純銅に他の金属元素を添加した銅合金の総称で、添加する元素によって様々な種類があります。純銅よりも強度や耐食性、耐摩耗性などの機械的特性を向上させた素材で、用途に応じて最適な合金が選ばれます。
代表的なものにはリン青銅、黄銅(真鍮)、ベリリウム銅などがあり、それぞれ特有の性質を持っています。
リン酸銅
リン青銅(りん青銅)は、銅とスズの合金である青銅にリンを添加して青銅内部の酸化銅を脱酸した銅合金です。スズの含有量は通常3~8%で、リンは0.03~0.35%程度含まれています。
リン青銅は引張強度とばね性に優れ、耐食性や耐摩耗性も高いため、ばね材料や電気接点、歯車、軸受などに広く使用されています。また、薬品などによる腐食にも強いという特性があります。
純銅に比べて電気伝導性は劣りますが、強度と導電性のバランスが取れた合金として、電子部品や精密機器のコネクタなどにも利用されています。加工においては、硬さが増すため切削抵抗が大きくなりますが、純銅に比べてバリが出にくいという利点もあります。
黄銅
黄銅(真鍮)は銅と亜鉛の合金で、亜鉛の割合が20%以上のものを指します。代表的な組成は銅が65%、亜鉛が35%程度で、亜鉛の割合が増えるほど硬度が向上しますが、40%を超えると脆くなる傾向があります。
黄銅は展延性に優れ、切削性も良好なため、加工がしやすく複雑な形状の部品製作に適しています。また、耐食性に優れており、空気中で表面が酸化して黒ずんだ皮膜を形成し、内部を保護します。
装飾品や建築金物、楽器部品など幅広い用途で使用されており、磨けば鮮やかな金色の光沢を取り戻すことから装飾目的でも利用されています。鉄やスズ、鉛など他の金属を添加することで、特性を改良した様々な種類の黄銅も開発されています。
ベリリウム銅
ベリリウム銅は銅にベリリウムを1.5~2.0%程度添加した高強度の銅合金です。熱処理により硬化する特性があり、適切な熱処理を施すと驚くほど高い強度と弾性を得ることができます。引張強度は鋼に匹敵し、ばね性にも優れているため、導電ばね材料として広く利用されています。
また、銅合金の中では比較的高い電気伝導性を保持しており、IACS(国際焼きなまし銅標準)の約25%程度の導電率を持っています。
スパークが発生してはいけない環境で使用する防爆工具や、耐疲労性が求められる電子部品のコネクタピン、医療機器の部品などに使用されています。ただし、ベリリウムは有毒であるため、加工時には粉塵の吸引を防ぐなどの安全対策が必要です。
銅の加工が難しいと言われる理由
ここでは、銅加工が難しいとされる理由とその克服方法について解説します。
熱が逃げやすい
銅は熱伝導率が非常に高く、この特性が加工時に様々な問題を引き起こします。溶接加工では、加熱部分の熱がすぐに周囲に逃げてしまうため、融合不良を起こしやすく作業効率も下がります。
十分な溶接熱を確保するために、通常の金属より高いエネルギー入力が必要となり、溶接前の予熱も欠かせません。
また切削加工でも、切削点で発生した熱が素早く逃げるため、切削油の効果が薄れ、刃先の冷却が不十分になることがあります。特に精密加工では、この熱による寸法変化が精度に影響するため、熱管理が重要です。
さらに、熱処理においても均一な加熱が難しく、冷却速度のコントロールも課題です。
変形しやすく力加減が難しい
銅は柔らかく展延性が高いため、加工時の力加減が非常に重要です。切削加工では刃物の圧力で素材が変形しやすく、精密な寸法を維持するのが難しくなります。特に薄板の加工では、クランプの力が強すぎるとへこみが生じたり、加工中の振動で変形したりすることがあります。
また、銅の展延性の高さは切削時にバリが発生しやすい原因にもなっており、切れ味の良い工具と適切な切削条件の設定が必要です。プレス加工や曲げ加工でも、スプリングバック(弾性回復)の予測が難しく、寸法精度を確保するには経験と技術が求められます。このように、銅の柔らかさと粘りは、加工時の力加減の難しさにつながっているのです。
銅の加工方法
ここでは、銅の主な加工方法とそれぞれの特徴について解説します。
切削加工
銅の切削加工は、フライス盤や旋盤などの工作機械を用いて素材を削り取り、目的の形状に仕上げる方法です。銅は柔らかいため切削自体は容易ですが、粘りがあるため切削屑が刃先に溶着しやすく、バリも発生しやすいという課題があります。
超硬工具やダイヤモンドコーティング工具を使用すると、より良好な切削面が得られることも多いです。
切断加工
銅の切断加工は、帯鋸(バンドソー)やファイバーレーザー、ウォータージェットなどを用いて行われます。銅は柔らかく粘りがあるため、切断面が伸びてしまい、きれいに切断するのが難しい金属です。
レーザー切断では、銅の光沢が強く反射率が高いため、通常のレーザーでは効率が悪く、高出力のファイバーレーザーが必要になります。
ウォータージェット切断は熱影響がなく、切断面の品質が高いという利点がありますが、コストが高くなる傾向があります。いずれの方法でも、切断後のバリ取り処理が重要になります。
研削加工
研削加工は砥石や研磨剤を用いて銅の表面を磨き上げる加工方法で、高い表面精度や寸法精度が求められる場合に用いられます。銅は柔らかいため研削時に砥石目詰まりを起こしやすく、適切な砥石選びと研削条件の設定が重要です。
オープン構造の砥石や粒度の粗い砥石を選び、適度な研削液を使用することで目詰まりを防止できます。
また、銅の研削では砥石の目立てを頻繁に行うことも必要です。鏡面仕上げなど高品質な表面を求める場合は、粗研削から始めて徐々に細かい粒度の砥石や研磨剤に移行する多段階研磨が効果的です。
研削時の熱による変形を防ぐため、十分な冷却と適切な保持方法にも注意が必要です。特に薄板や精密部品の研削では、変形防止のための工夫が欠かせません。
穴あけ加工
銅の穴あけ加工はドリルを用いて行いますが、銅の柔らかさと粘りのために、バリの発生や穴壁面の粗さが課題となります。
穴あけ加工を成功させるポイントは、切削速度を上げることと、適切なドリル選択にあります。高速回転でドリルを回すことで切削抵抗を下げ、バリの発生を抑制できます。また、すくい角が大きめのシャープなドリルを使うことで、切削屑の排出がスムーズになります。
深穴加工の場合は、切削屑の排出を考慮して段階的に穴を開けたり、ペッキング(断続的な穴あけ)を行ったりすることも効果的です。精密な穴位置や穴径が必要な場合は、下穴を開けてから加工するという手順も有効です。
プレス加工
プレス加工は、金型を用いて銅材に圧力をかけ、曲げたり、絞ったり、打ち抜いたりする加工方法です。銅は展延性に優れているため、複雑な形状のプレス加工に適していますが、その柔らかさから寸法精度の確保が課題となります。
プレス加工のポイントは、適切な金型設計と加工条件の設定です。曲げ加工では、スプリングバック(弾性回復)を考慮した金型設計が必要で、材料の厚みや硬さに応じた曲げ半径やクリアランスを設定します。
打ち抜き加工では、シャープな刃先の金型を使用し、適切なクリアランスを設けることでバリの発生を抑制できます。また、銅は表面に傷がつきやすいため、金型表面の仕上げや潤滑剤の選択も重要です。高精度なプレス加工には、材料特性に合わせた試作と調整のプロセスが欠かせません。
溶接加工
銅の溶接加工は、その高い熱伝導性のために特別な技術と配慮が必要です。熱が素早く逃げてしまうため、通常の溶接よりも高いエネルギー入力が必要となり、TIG溶接やMIG溶接、レーザー溶接などの方法が用いられます。
溶接成功のポイントは、十分な予熱と適切な溶接材料の選択です。溶接前に部材を200〜400℃程度に予熱することで、熱の逃げを遅らせ、溶け込みを改善できます。
また、銅の種類によっては溶接時にブローホール(気泡)が発生しやすいため、脱酸素処理された溶接材料を使用することが推奨されます。特にタフピッチ銅は高温で水素脆化を起こしやすいため、無酸素銅や脱酸銅を溶接材料として選ぶことが重要です。
溶接後の冷却速度も管理し、急冷による割れを防止することも必要です。大型部材や肉厚の大きい部材の溶接では、熱ひずみを考慮した拘束方法と溶接順序の工夫も欠かせません。
銅の加工を成功させるポイント
ここでは、銅加工を成功させるための重要なポイントについて解説します。
鋭い工具で素早く切断する
銅の切削・切断加工では、鋭利な工具と高速切削が成功のカギとなります。
銅は柔らかく粘りがあるため、切れ味の悪い工具では材料が押しつぶされてバリが発生しやすくなります。超硬工具やダイヤモンドコーティング工具など、硬質でシャープな刃先の工具を選択することが重要です。
また、切削速度を上げることで切削抵抗が下がり、バリの発生を抑制できます。さらに、切削深さを浅くして何回かに分けて加工することで、加工面の品質が向上することもあります。鋭い工具と適切な切削条件の組み合わせが、高品質な加工を実現する秘訣です。
溶接時に予熱しておく
銅の溶接では、その高い熱伝導性を考慮した予熱処理が不可欠です。予熱を行わないと、溶接部の熱が周囲に急速に奪われ、融合不良や溶け込み不足などの欠陥が生じやすくなります。
適切な予熱温度は銅の種類や厚みによって異なりますが、一般的には200〜400℃程度に予熱することで良好な溶接結果が得られます。予熱方法にはガストーチや電気ヒーターが用いられ、溶接部全体を均一に加熱することが重要です。
また、溶接中も入熱量を多めに設定し、溶接速度をやや遅めにすることで、良好な溶け込みが確保できます。
溶接材料には銅の種類に合ったものを選び、特にタフピッチ銅を溶接する場合は水素脆化を防ぐため、脱酸された溶接材料を使用することが求められます。溶接後の冷却も急激な温度変化を避け、徐冷することで割れの発生を防止できます。
割れや寸法ミスに気を付ける
銅の加工では、その柔らかさと粘りのために割れや寸法ミスが生じやすいという課題があります。
特に曲げ加工やプレス加工では、スプリングバック(弾性回復)による寸法ずれが発生しやすく、これを見越した金型設計や加工条件の設定が必要です。材料の特性を理解し、適切な曲げ半径やクリアランスを設定することが重要です。
また、薄板の加工では変形や振動による寸法ミスが生じやすいため、適切な保持方法と加工手順の工夫が求められます。加工中の熱による膨張・収縮も寸法精度に影響するため、十分な冷却と温度管理が必要です。
割れを防止するには、材料の結晶方向(圧延方向)を考慮した加工方向の選択も重要です。高精度な加工には、試作と調整のプロセスを経て、銅の特性に合わせた最適な加工条件を見つけることが不可欠です。
まとめ
銅は多くの優れた特性を持つ金属素材ですが、加工には独自の課題があります。柔らかく粘りがあるため、切削時のバリ発生や溶接時の熱の逃げといった問題に直面します。
銅の種類と特性を理解し、適切な工具選択と加工条件の設定を行うことが重要です。鋭い工具での高速切削、溶接前の予熱、寸法精度確保のための工夫など、銅特有のポイントを押さえることで、高品質な製品製作が可能になります。