MCナイロンの加工方法とは?特徴や用途、加工事例などを解説 | 株式会社タキオンワタナベ

コラム

MCナイロンの加工方法とは?特徴や用途、加工事例などを解説

2025年2月17日

工業製品の部品には、金属だけでなくさまざまなプラスチック素材が使われています。その中でもMCナイロンは、高い機械的強度と優れた潤滑性を持つエンジニアリングプラスチックとして注目を集めている素材です。

この記事では、産業界で幅広く活用されているMCナイロンの特徴や加工方法、活用事例について詳しく解説していきます。

MCナイロンとは

MCナイロンとは

MCナイロンは、ナイロンモノマーを原料として大気圧下で重合・成形して作られる高機能樹脂材料です。MCという名前は「モノマーキャスト(Monomer Cast)」の略で、その特殊な製造方法に由来しています。

一般的なナイロン樹脂と同じポリアミド系の素材ですが、製造工程で大気圧下での重合・成形を行うことで、通常の射出成形品や押出成型品とは異なる優れた特性を持っています。この製造方法により、結晶化度が高く、ひずみの少ない高品質な樹脂材料です。

特徴

MCナイロンは、一般的なナイロンの特性を大きく向上させた高性能な工業材料です。

機械的強度が非常に高く、120℃までの耐熱性を有しています。特筆すべきは優れた耐摩耗性と自己潤滑性で、金属部品との摩擦においても安定した性能を発揮します。

また、有機溶剤に対する高い耐性を持ち、化学的な環境下でも使用可能です。さらに、添加剤を配合することで潤滑性や導電性、耐候性などの特性を強化でき、用途に応じた性能のカスタマイズが可能です。

種類

MCナイロンは、使用目的に応じて多様なグレードが開発されています。

最も一般的な基本グレードは鮮やかな青色のMC901で、工業用部品の定番として広く使用されています。同じ基本グレードでもナチュラルカラーのMC900NCは、着色されていないアイボリー色が特徴です。

特殊用途向けには、屋外での使用に適した耐候性グレードのMC801(黒灰色)、摺動性を特に高めたMC703HL(紫色)があります。さらに、高温環境下での使用に対応する高強度・耐熱グレードのMC602ST(茶色)や、静電気対策用の導電性・帯電防止グレードMC501シリーズなど、それぞれの用途に最適化された製品が用意されています。

各グレードは色による識別が容易で、現場での取り扱いやすさにもよい影響をもたらすでしょう。

MCナイロンの用途

MCナイロンの用途

MCナイロンは、その優れた機械的特性を活かして幅広い産業分野で活躍しています。特に金属部品からの代替材料として注目を集め、産業機械の機構部品で高い評価を得ているのです。

具体的には、生産ライン用の搬送機器部品や、工作機械のギア・スプロケット類、軸受けやベアリングなど、多岐にわたる実績があります。

また、半導体製造装置や食品製造機械など、高い清浄度や耐久性が要求される環境でも重要な役割を果たすでしょう。特に、導電グレードは電子部品製造現場のクリーンルーム内で使用される部品やパレットとして絶大な信頼を得ています。

加えて、屋外で使用される建設機械や農業機械の部品としても、耐候グレードの活用が進んでいます。その耐摩耗性と低摩擦特性により、メンテナンス頻度の低減という価値を生み出しているのです。

MCナイロンを使うメリット

MCナイロンを使うメリット

数あるプラスチック素材の中でも、MCナイロンが多くの産業分野で選ばれる理由は、その卓越した機械的特性にあります。耐摩耗性、耐熱性、そして自己潤滑性など、工業用部品として求められる性能を高いレベルで実現しています。

ここでは、MCナイロンの主要なメリットについて詳しく見ていきましょう。

強度が高い

MCナイロンの最大の特長は、その高い機械的強度にあるでしょう。

一般的なナイロンと比較して、引張強度、圧縮強度、曲げ強度のいずれも優れた値を示す点が特徴です。広い温度範囲で安定した強度を維持できることも、産業用途での採用を後押ししています。

高い結晶性により、温度上昇に伴う強度低下も比較的小さく抑えられています。このため、継続的な負荷がかかる用途や、高温環境下での使用においても安定した性能を発揮するでしょう。

さらに、優れた耐衝撃性を持つことから、振動や衝撃が発生する環境下でも十分な耐久性を示せるのです。

潤滑性が高い

MCナイロンの自己潤滑性は、産業機械部品として極めて重要な特性です。金属部品との摩擦において、別途潤滑剤を使用しなくても安定した低摩擦係数を維持できる点が大きな強みでしょう。

この特性により、金属同士の接触による摩耗や焼き付きのリスクを大幅に低減することが可能です。

特に摺動グレード(MC703HL)では、さらに潤滑性が向上し、より過酷な使用条件下でも安定した性能を発揮。メンテナンス頻度の低減やシステム全体の長寿命化という付加価値を生み出しています。

MCナイロンのデメリット

MCナイロンのデメリット

MCナイロンにはいくつかの課題点があります。

吸水性の高さ

一つ目は吸水性の高さです。環境湿度の変化により寸法変化が生じやすく、特に精密な部品を製作する際には注意が必要です。空気中の水分を吸収することで、サイズが0.2~0.3%程度膨張することもあります。

酸に対する耐性が低い

化学的な側面では酸に対する耐性が低いという特徴があります。特に強酸との接触は避けるべきでしょう。一方で有機溶剤には強い耐性を示すため、使用環境に応じた適材適所の選択が重要です。

射出成形が難しい

製造面での制約も無視できません。射出成形による量産が難しく、基本的に切削加工での製作が主体となります。このため、一般的なナイロン樹脂と比較して製造コストが高くなる傾向にあるでしょう。特に複雑な形状の部品を大量生産する場合、コスト面での課題が顕著です。

耐熱温度に制限がある

耐熱温度にも制限があります。標準グレードでは120℃程度が連続使用の上限です。より高温での使用には、高強度・耐熱グレード(MC602ST)を選択する必要があるでしょう。

ただし、このグレードでも150℃が上限となるため、それ以上の高温環境では他の材料を検討する必要があるのです。

MCナイロンの加工方法

MCナイロンの加工方法

MCナイロンの加工は主に切削加工によって行われ、その方法は大きく3つに分類できるでしょう。

マシニング加工では板材から複雑な形状を削り出すことが可能です。また、旋盤加工では丸棒材から軸物や円筒形状の部品を作り出せます。さらに、ドリルによる穴あけ加工も一般的な手法として広く採用されているのです。

切削加工では材料を固定し、エンドミルやドリルなどの工具を使用して必要なサイズや形状に仕上げていきます。マシニングセンタでは、自動工具交換装置により複数の加工を連続して行うことが可能です。

また、NCプログラムを使用することで、高精度な加工を実現しているのです。

MCナイロンの加工事例

MCナイロンの加工事例

産業界ではさまざまな形状のMCナイロン部品が使用されています。

例えば、搬送機器用のローラーやガイドレールは、高い摺動性と耐久性が求められる代表的な事例です。また、各種ギアや軸受け部品は、安定した寸法精度と機械的強度が必要とされる加工例として挙げられるでしょう。

特に、半導体製造装置向けの部品では、高精度な加工と帯電防止性能の両立が要求されます。このような場合、導電グレードのMCナイロンを使用し、高度な加工技術によって要求精度を満たしているのです。

MCナイロン加工の注意点

MCナイロン加工の注意点

MCナイロンの加工には、いくつかの重要な注意点があります。

最も重要なのが熱管理でしょう。切削時の発熱による変形を防ぐため、適切な切削速度や送り速度の設定が不可欠です。

また、MCナイロンは吸水性が高いという特徴があるため、切削油の選択にも注意が必要です。水溶性切削油は避け、必要な場合は非水溶性の切削油を使用することが推奨されています。

さらに、バリの発生を抑制するための工具選択も重要です。適切な工具と加工条件を選ぶことで、後処理の工数を減らせるでしょう。加えて、吸水による寸法変化を考慮した加工余裕の設定も欠かせません。

まとめ

MCナイロンは、その優れた機械的特性と加工性により、産業機械部品として幅広く活用されています。金属部品の代替材料として高い性能を発揮し、適切な加工条件で処理することで高精度な部品製作が可能です。用途に応じた最適なグレード選択と加工方法の検討を行うことで、より効果的な活用が見込めるでしょう。

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